NPO法人KAINが事務局を務めるP2Pコンソシアムは、意識ある住民、全国で活動するまちづくり組織や産学官が協働、参加しながら、 次世代のネットワーク技術であるP2Pプラットフォームやアプリケーションの利活用を通じて、人と人を繋ぐ真のネットワーク技術の醸成を目的とした実験を企画・推進してゆくものです。

 本コンソシアムが目指すネットワークは、ブローカレス型ネットワークであり、いわゆるP2P型のファイル交換ソフトを指すのではありません。なぜならそれらは、P2Pシステムが実現できる一側面に過ぎず、ピア間の2者間インターラクションにP2P方式を利用するだけでは、 当コンソシアムが意図するP2Pシステムであることの十分条件を満足していないからです。

 ブローカレス型ネットワークへの取り組みは、地域活動、コミュニィティビジネス、ネットワークゲーム、行政サービス、グリットコンピューティング、交通ネットワーク、 ユビキタスコンピューティング、など幅広い分野で期待される、世界初のコミュニィティ形成実験であり、疲弊した 日本社会を賦活する道具として大いに期待される活動であると考えています。

 ゆるやかな連携・自己増殖性・自然淘汰・ブローカレス・自律分散協調・局所性・連鎖反応など、人間の社会活動を情報化技術として具現化した『ブローカレスモデルおよびSIONet(意味情報ネットワーク )』(NTT研究所の星合隆成博士が1998年に提唱/ *3)は、世界初のP2Pプラットフォームであるばかりか、21世紀型の新しいネットワークとして極めて有効な手段になるであろうと考えています。
また、近い将来、ブローカレス型ネットワークは、多くの分野に応用され、次世代には欠かせないコミュニケーションツールに成る可能性を秘めています。
 SIONetは、現在、NTTネットワークサービスシステム研究所において開発が進められており、これまでにも、コミュニティシステムや医療システム、またグリッドコンピューティングへの適用がはかられて実用に供され、その可能性を十分に感じられる結果を得てきたのです。
当コンソシアムでは、多くの団体がその理念に基づきブローカレス型ネットワークの利活用を実践しますが、以下に参加団体の1であるNPO:KAINの取り組み理念について説明します。


 

NPO:法人KAINの場合・・・・・

『情報化を通して、ひとづくり・まちづくり・お手伝い』をスローガンに活動するNPO法人桐生地域情報ネットワーク(以下、NPO法人KAIN:図1)は、その実践と研究の中から21世紀の社会基盤となるであろう情報化技術と地域に住む方々のネットワークを融合させた『新しい隣組』の理念を提唱しています。これを実現するためには、「コミュニティプラットフォーム(Community platform)( *1)と、そこに蓄積活用される財産「コミュニティアーカイブス(Community archives)( *2)の両立が必須だと考え、その実現に向けた活動を展開しています。『まちづくり』とは地域に住われる方々の「ヒューマンネットワーク」の生成・更新・消滅の連続であり、そこに棲む人々の人生そのものであるというのが、私達の基本理念です。
 当NPOは、“IT技術とヒューマンネットワークが融合、連携し、自律分散協調型ネットワークのまち”=「新しい隣組み」を目指し、様々なまちづくり活動を行う団体と共に、地域文化のアーカイブ事業などにIT技術を用いて活動を続けて参りました。

 P2PコンソシアムとNTTネットワークサービスシステム研究所との共同実験協定に基づき、P2Pコンソシアムは、SIONet3.1および、SIONetのプラグインソフト(アプリケーション)の提供を受け、NPO法人KAIN(P2Pコンソシアム)の責任において、P2P実験を推進していきます。
 SIONetは非市販品であり、本実験以外の個人への貸与販売などは行っていません。また、協同実験協定では、上記プログラムの提供に加えて、技術サポート、バグ発生時の問題処理対応などが行われます。
*1 コミュニィティプラットフォーム(Community Platform)
   地域に根ざした新たな活動拠点をコミュニィティプラットフォームと呼ぶ。ハード面では、既存の施設(公民館、図書館など)、ソフト面では多くの市民団体(婦人会、NPO,、ボランティア団体)などを、地域の情報ネットーワーク拠点とするのだが、その際、各拠点が自律しながら協調してネットワークを結ぶ『自律分散協調型ネットワーク』が形成される。各拠点が有機的に連携して、地域や住民の『ニーズとシーズ』がバランスよく結び付き運用される『新しい隣組連合』の仕組みが形成される。
*2 コミュニティ・アーカイブズ(Community Archives)
   コミュニティープラットフォームの運営や活動を通して、コミュニティアーカイブズが醸成される。地域固有の文化・歴史・人物・産業・環境などあらゆる物を後世に残し伝え、まちの文化遺伝子を大切にする心や思想を、高齢者や体験者から聞き取り、それを編集・蓄積するプロセスから醸成する作業そのものを、『地域の文化遺伝子の蓄積』(コミュニティーアーカイブズ)と定義する。
通常の暮らしの中で交換される情報、いわゆる生活情報も経年後、編集を加えてコミュニティーアーカイブズに組み込まれてゆく。
*3 星合編著:“ブローカレスモデルとSIONet−新世代ネットワーク技術の全貌−、”電気通信協会(オーム社刊)、2003。詳しくはこちら

図1 NPO法人桐生地域情報ネットワーク 組織図


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