今回使用する「SIONet」についてその特徴を上げながら簡単に説明いたします。
1) 多目的な利用ができる
   P2Pネットワークを語る上で必ずと言って良いほど語られるファイル交換ソフトとして「ネプスター(Napster)」や「グヌーテラ(Gnutella)」等が挙げられます。これらのP2Pシステムは、サービス(音楽交換、ファイル交換など)を可能にする“アプリケーション”部分と、検索の実行や検索結果を知らせる“プロトコル”部分が一体となって作られています。また、プロトコル部分は各ソフトごとに独自に作られているため、アプリケーションを共有することは不可能です。
 そこで、SIONetでは,アプリケーション部分とプロトコル部分を明確に分け、SIONetのプロトコルをいくつものアプリケーションで使える設計しています。
2) 安心・安全に利用可能
   SIONetでは、「意味情報」と呼ばれるキーワードに基づいて、情報の転送作業を行います。意味情報とは、転送する情報の内容や概要を表したもので、SIONetではその「意味情報」を見ながら情報の転送先や転送経路を決めます。
 そのような特徴を利用することで、参加者は同じキーワードを共通項として持った「イベントプレイス」と呼ばれるネットワークコミュニティを作れます。それにより、情報の送り先をそのイベントプレイス内に限定することが可能なのです。つまり、個人的な情報を守りつつ、限られたコミュニティの中だけで情報交換ができるシステムであると言えます。イベントプレイス間での情報の転送は、意味情報を「選択」することによって、不正な情報や不必要な情報の受け渡しを防ぐことができ、必要な情報だけを受け取れるのです。
3) 規模の拡大に対応
   SIONetでは、情報転送に関わるノードを、地理的に散らばせて配置することができるので、SIONetの利用者が使うネットワークの回線利用量が増加しても、ストレスを感じること無く快適にサービスを利用することが可能です。また、あるノードが障害になっても、他のノードがそれを代行することができるので、システム全体の信頼性を高めています。
 これまでは、利用者の資料時間帯が集中すると、データの転送速度が遅くなり、メールやデータベースの利用などあらゆる場面で支障がでることがありました。また、多くのサーバは一度に送れる情報量に制限があるため、サイズの大きいメールなどは送受信できないなどの問題がありましたが、SIOnetを使うことで、そのような問題もクリアできるのです。

 それでは以下、この「SIOnet」によって行う実証実験について簡単に説明いたします。
1) アドホックモールプロジェクト
   桐生在住の作家自身が中心になり、誰もが自由に出店、買い物ができるインターネットバーチャルモールを構築します。バーチャルでありながら、フリーマーケットで買い物をするようなアプリケーションです。
 ヤフーや楽天市場のように、ブローカがあらかじめ用意した「テナント」状のモールに出店するのとは異なり、マーケットそのものを参加者である作家自らが生み出し、育て、さらには別のイベントプレイスを設置したりすることが可能です。
 管理者が不在であるため、参加者は自らの情報だけを管理すれば良いのです。これによって、今まで必要とされてきたサーバやネットワーク管理者などを必要とせずにモールの運営が可能となります。
2) ワイン日記
   本来日記というものは個人個人が書くものですが、このワイン日記は、参加者が書いた日記をまるで一冊の本でも読むように閲覧できるアプリケーションです。
 また、閲覧者は、意味情報(キーワード)を選択することで、検索条件に合致したワイン情報だけを取り出して閲覧することや例えば「20代女性が好む」と検索することで専門家はマーケティングにも利用することも可能です。
 この際、各個人が自身のパソコンに登録したプロフィール情報を元に検索され合致した情報のみが閲覧可能となり、検索を行った参加者は登録したプロフィールすべてを直接みることはできないため、参加者にとって非常にセキアーなシステムであると言えます。

 作家参加者と一般ユーザの新たなコミュニティ形成を期待しています。
 例えば、アドホックモールプロジェクトの場合、このモールがきっかけとなり、近くに住む作家達が実際に場所を借りてマーケットをオープンさせたり、PC環境の整っていない作家へのサポートとして、数十人の作家の作品をモールに紹介する方(ここではバーチャルとリアルの2つのネットワークを繋ぐという意味から「コネクター」と呼びたい)が誕生したりと、コミュニティビジネスのモデル形成に役立つのではないかと期待しています。
 また、作家の作品がきっかけになり、実際に作品が置いてあるショップや街へ人々が訪れ、新しい形の地域活性化のきっかけになることを望んでいます。

この実証実験は、18年間に渡って桐生地域で活動してきたNPO法人:桐生地域情報ネットワーク(以下、NPO:KAIN)とNTTによるものです。
 これまでにも、学術的な検証やビジネスの面からP2Pシステムを利用した実験が行われてきましたが、地域活性化、情報化という視点での実験は、世界でも類を見ない画期的な実験であると考えております。
 ネットワークのパケットを収集したり、ログを解析することで様々な統計データを集めることができます。そのデータを分析し、検証することでこれまでになかった学術的なアプローチを期待しています。


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